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証券化された特定のリスクを負担したいと考える投資家は証券化商品を購入することで自らが望ましいと思う水準のリスクを負担できます。
この結果市場全体で見たリスク分担の効率性も向上することになるのです。
円滑な資金調達と効率的なリスク分担は実物投資の促進をもたらすと考えられます。
証券化を利用することで投資家が望ましいと思うリスクへの投資が容易になりそれによって資金調達が容易になるのですから最終的な実物投資も盛んになるというわけです。
もちろん過大な期待は慎むべきですがわが国での現在の証券化の促進はこのような実物投資の促進が投資一特に不動産市場への投資-を活性化させるという期待にも支えられているのです。
証券化金融商品の中心をなす債権の証券化はまずそもそもの債権者が保有する多数の債権をひとまとめにして特別目的事業体(SPV)に譲渡・売却することから作業が始まります。
SPVはこうして手に入れた債権への返済金を原資として証券を発行するのですから債務者に対して自分(すなわちSPV)に支払いを求めたり第三者に対して債務者への自分の債権の地位を主張できることが重要になります。
これは法律では「対抗要件」と呼ばれる概念ですがこの対抗要件を具備するためにはそれなりの手続きが必要となります。
この手続きが煩雑で高い費用がかかるものであったらそれだけで債権の証券化はできなくなってしまいます。
実はわが国では民法に規定されるこの手続きが個別に通知を出したり承諾を得る必要があるなど非常に費用のかかるものでした。
1993年の特定債権法はリース・クレジット債権について公告による対抗要件の取得を可能としこの費用を引き下げることで証券化を実効あるものとする第一歩となったのです。
現代の金融市場においては企業や金融機関には様々なリスクのコントロールが要求されます。
投資活動においてVAR(バリュー・アット・リスク)の手法や格付けの重要性が増したことはそのようなリスクのコントロールへの要請という事実を示す良い例でしょう。
また銀行のBIS規制のようにバランスシート(貸借対照表)上でのリスクのコントロールを求める制度も重要になりました。
一般の事業会社でも投資家との関係を良好に保つためバランスシートの内容に常に気を配らなければなりません。
金融活動を行うためにはいまやリスクをコントロールする手法が不可欠なのです。
証券化を利用すれば取引するリスクの内容や大きさを伝統的資金調達手段よりも容易にコントロールできます。
証券化金融商品ならばこのリスク管理のニーズに応えられるのです。
株式や債権といった伝統的手法と異なり証券化では例えば特定の資産(すなわち特定のリスク)を選んで取引することができます。
発行証券の支払いスケジュールをデザインしたり信用保証を付けることによって取引するリスクの特性を調節することもできます。
さらに特別目的主体(SPV)に売却または譲渡することでそもそもの資産保有者が特定の資産をオフバランス化しバランスシートの内容を望むように変えることもできます。
リスクをコントロールする必要性に応えられること。
これがいま証券化が利用される理由なのです。
リスクをコントロールするという観点からすると証券化とデリバティブは似ています。
実際証券化金融商品のなかには何らかのデリバティブが埋め込まれているのが普通です。
証券化金融商品に裏付けとなる資産がある点を除けば機能上の両者の差はますます小さくなっていると言えるでしょう。
証券化は単に資産を売却するための一手法というだけでなく取引するリスクをコントロールしながら資本市場とその他の市場を資金の流れでつなぐ新たな仕組みストラクチャード・ファイナンスという金融活動のリスクコントロール・メカニズムヘと発展を続けているのです。
事業会社や金融機関を思い浮かべて下さい。
経営のためこれらの企業は様々な資産を保有しています。
先に証券化の対象として挙げた住宅ローン債権リース・クレジット債権売掛債権不動産等もそのような資産の一部です。
各々の資産の価値は当然不確実に変動します。
資産需要金利や為替原材料や製品価格の変動、これらすべてが資産の価値に影響を与えます。
さらに新製品開発に成功するかライバル企業との市場獲得競争に勝てるか業務の効率性をどれだけ上げられるかといったいわゆる経営の成否も重要な要因となります。
いずれにせよ企業が保有する資産全体の価値-したがって企業の価値は不確実に変動するわけです。
さていまこれらの資産の取得のために使われた資金が借り入れや債券・株式の発行といった伝統的な手法によって調達されていたとしましょう。
貸し手や債券・株式の購入者はただで資金を提供するわけではありません。
現在の資金を企業に提供する見返りとして将来の支払いが企業からなされることを要求します。
例えば貸し手や債券の購入者(債権者)ならば貸金や債券購入の見返りに将来元利金の返済を企業から受け取る契約をします。
また株式の購入者(株主)ならば現在株式を購入する見返りに企業が全体で保有する資産から元利金等を支払った残余を請求する権利を得ることになります。
もちろん資金の提供者へのこれらの支払いの原資は企業が全体で保有する資産です。
このため資金の提供者が将来実際に受け取る金額は不確実なものとなります。
例えば企業が全体で保有する資産価値が元利金の返済に十分な金額に達しなければ債務不履行が生じてしまいます。
そうなれば債権者は約束された元利金を実際には受け取れないことになります。
またそうならなくとも株主の受け取り分は企業価値から債務を返済した残余ですから当然企業の資産全体の価値変動とともに増減します。
資金提供者の立場から見るとこれはリスクです。
しかもこのリスクは企業が保有する資産全体の価値の変動によって引き起こされます。
その意味で企業が抱える個々の資産や経営の成否のリスクをひとまとめにした「リスクの束」によって引き起こされます。
債権者になるか株主になるかでこのリスクの束のどの部分を負担するかは変わってきますがいずれにせよ伝統的な資金調達手法では資金提供者は企業の価値というリスクの束全体に依存して決まるリスクの負担を求められることになるのです。
しかしながら現代では高度なリスク・コントロールが要請されます。
そのため資金を提供する投資家の多くは企業全体というリスクの束をひとまとめに抱えることは好まないかもしれません。
むしろ取引するリスクを限定し様々なリスク特性を持つ様々な資産の中からリスクが比較的小さいという特性を持つ資産や分散投資に役立つリスク特性を持つ資産だけを取り出して購入したいという欲求を持つことになるでしょう。
こうなると企業にとっても企業全体というリスクの束をひとまとめにして売却するより個々の資産をばらばらに売却する方が得になります。
保有する様々な資産の中から特定のリスク特性を持つ資産だけを取り出しそれを欲しがる投資家に売却する。
これが可能なら、その部分はより高い金額でしかも簡単に売れるのでそれだけ資金調達も容易になるからです。
さらに現実には後述するいくつかの制度的な理由によって売却などの方法で特定の資産をバランスシートから削除すること自体が企業に利益をもたらす場合もあります。
特定の資産を売却したい者とその特定の資産だけを購入したい者。
双方の欲求を満たせれば良いのですが伝統的な資金調達手段ではこれはできません。
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